テクノロジープラットフォームと民主主義の倫理
さて、大上段に壮大なタイトルを書いてみたものの、たいして深い思考をめぐらせているわけではなく、今後、考えていきたいテーマのひとつといったところです。
なぜこんなテーマで書いてみたかというと、最近読んだ本の内容がなかなか衝撃的だったから。
カナダ生まれ、クィアの著者がオバマの選挙にかかわってテクノロジーが政治(選挙)に大きな変化を生む様子を見て可能性を感じ、カナダ、イギリスの政党を支援することになり、流れ流れて、気がついたらスティーブ・バノンと意気投合し、ケンブリッジ・アナリティカのマイクロターゲティングの仕組みを作り上げ、その後、嫌気がさして辞めたけど、ブレグジットとトランプ当選にそのテクノロジーが使われていたこと、ロシアがその背後にいたことを内部告発するまでの話。
ケンブリッジ・アナリティカの内部告発といえば、ブリタニー・カイザーだと認識していたけど、むしろ、クリス・ワイリーの方がはるかに実態を伝えていたとは、まったく知らなかった。
色々な論点があって、追々考えたことは書いていきたいけど、本の感想としては、SNS とデータと高度な心理学的知見と UX を総動員してマインドハッキングできてしまうプロセスがリアルに描かれているところが、本当に衝撃的だった。
著者が内部告発することを決めて、ジャーナリストや弁護士、議会、当局と協力して(なぜかヒュー・グラントも登場)、スクープのリリースに至るまでのプロセスも生々しく、本を読んだ人はぜひ YouTube で Channel4 の潜入捜査の映像も見てほしい。
最後に著者がいくつかの提言をしていて、エンジニアの職業倫理に触れているのだが、これも原発と同じ構造で、規制する側に必要になる専門的知見をどうやってガバナンスに組み込み配置するかが決定的に重要で、同時に決定的に難しいのだろう。
民主主義をプログレッシブ方面にハッキングするとか、あってもいいのではないかと思う今日このごろ。